木の命を大切に活かす


カリモクは木製家具メーカーとして、森林保全や林業地域の活性化にいち早く取り組んできました。
国産の広葉樹の多くは小径木で、品質にばらつきがあるため家具用材に不向きとされ、そのほとんどが紙パルプの原料となるチップにされてきました。この貴重な森林資源を、より有効に活用するためにカリモクにできることは何か――。

そのチャレンジが、広葉樹の小径木を家具用材として甦らせることでした。樹種ごとの特質を見極めながら、素材としてのさまざまな可能性を追求していくこと。手間をかけ、カリモクの技術力を結集して、木のいのちを大切に活かしきっていくこと。

デザイナーに小林幹也を迎えてスタートしたHARU。その最初の取り組みでは、木目の美しさから高級家具に用いられてきた東北のナラ材を使用しています。こうした取り組みを通じて、かつて里山の広葉樹林が果たしてきた循環型の生態系の回復や林業の活性化に貢献したいと願っています。


HT-1のテーブル。ナラ材の美しい木目と色調をバランスよく整えた集成技術が、小径木を家具として甦らせた。

軽やかな美しいフォルム

HARUのデザインは、軽やかな美しいフォルムが特徴です。「住空間に圧迫感を与えず、存在を主張しすぎず、どんな生活空間にも調和して、心地よい佇まいを醸し出す家具」----小林幹也のHARUに込めた思いがここに集約されています。

テーブルも椅子もソファも、脚はすっきりと細め。「貫」(脚部の補強材)を使っていないので、軽やかさがより際立っています。さらに、視覚的な軽やかさを演出するために施された、きめ細かなディテールの処理。テーブルの天板の裏側をゆるやかに面取りすることで重量感をやわらげ、椅子の座面の桟にもかすかな曲面を設けて手触りでも軽さが感じ取れるようになっています。細部にこだわった何気ないデザインの積み重ね。軽やかで美しいフォルムの秘密は、こんなところにも隠されています。

軽やかだけど、丈夫

毎日座ったり動かしたりする椅子は、家具のなかでもとくに丈夫さが求められます。軽やかで繊細なデザインと、確かな堅牢性。この相反する要素をいかに実現していくのか----。
これが試作段階での大きな課題でした。たとえば「貫」を使わない椅子では、「フィンガージョイント」と呼ばれる高度な接合技術によって強度を確保するなど、長年培ってきたカリモクの木工技術が駆使されています。

そして、品質至上の家具づくりに取り組むカリモクの、「高品質の番人」ともいえるのが、厳しい耐久テスト。たとえば木製肘掛け椅子の場合は、55kgの荷重を座面に3万回落下させる試験をクリアしなければなりません。こうした工程を経て、「軽やかだけど、丈夫」が実現しました。


HC-1のチェア。強度を確保するために、座面の横桟と脚部の接合にフィンガージョイントを採用。曲面のある桟が軽やかさと手触りのよさを生む。


HC-3のアームチェア。大きな背面を支えるのは細めの部材。「くの字」型の接合部にもフィンガージョイントを使用。

座り心地がいい理由


座り心地の良し悪しは、椅子選びの重要なポイント。ソファにはリラックスした座り心地が、ダイニングの椅子には食事に適した座り心地が求められ、それは体型によっても微妙に異なります。

カリモクでは人間工学を導入して、座り心地を科学的に解析する研究をいち早く進めてきました。体圧分散測定器、血流計などを使って蓄積した膨大なデータに基づき、体への負担が少ない快適な座り心地を追求しています。座ったときの体圧を分散させて血流を妨げず、なおかつ背骨を正しく保持するための座面や背もたれの構造を独自に開発。この研究成果はHARUにも応用されています。

そして、座り心地を左右するもう一つの要素が、布を張る技術。からだを優しく包み込む絶妙な張り具合を決めるのは、モデラーの腕にかかっています。科学的な実証と熟練の手技がある。だから、座り心地がよいのです。


HC-2のチェア。心地よさを実現する張り具合は熟練の手技に裏打ちされています。

長く愛用される家具を

太陽のように、人の生活をさり気なく支える家具をつくりたいという思いから生まれたHARUは、どんなライフスタイルにも、どんな生活空間にもしっくりと馴染み、使う人を選びません。奇をてらわないデザインだから、人の暮らしにそっと寄り添い、歳月を重ねるうちに、かけがえのない存在になっていくのです。

100年生きた木は、伐採され、家具に加工されても、呼吸をしながら100年生き続けるといわれています。年を経るごとに味わいを増していくのも、木が生きている証拠。いのちの温もりを宿しているから、木の家具にやすらぎや心地よさを感じるのかもしれません。時代を超えて長く愛用される家具を、大切な木のいのちとともに、次世代へつなげていきたい。そんな願いをHARUに託しています。